社員旅行(完結編)





ヤバイです!激ヤバです!

手元に時計はありませんが結構な時間になってるはずです。

玄関に鍵が掛かってても不思議ではありません。

ここまでやっとたどり着いたのに、まさかが掛かっているとは!

二人で途方に暮れます。

無駄な抵抗っぽいですが自動で開かなければ手動で・・・

そう思い、手でこじ開けようとしますが開きません。

力を入れるとガチッと音がして、数ミリ隙間ができるくらい。

さすが有名なホテルの玄関自動ドアです。作りがよろしい!!

と、関心している場合ではありません。

何とかしなければ・・・

もう一度フロントを見ますが人影は無い

でも灯りはついてるし、ちょっといないだけかもしれません。


か〜すけ
「もうこうなったら、声をかけて開けてもらおうぜ!
 このまま中に入れなかったらシャレになんないからよ」


「そうですね!そうするしかないっすね」



二人で自動ドアをこじ開けながらフロントに向かって大声

叫びまくります。


か〜すけ
「すいませ〜ん、誰かいませんか〜」


「誰かいませんか〜開けて下さ〜い」



何回も声を出しますが反応無し

二人の声が段々と大きくなります。

自動ドアを開ける手にも力が入ります。

σ(^_^;が立ったままで、Mが座ってそので・・・

そんな状態で大声を出していました。

そして10分位たった頃、何の気なしに下のMを見てみたら・・・

自動ドアの少しの隙間から、どうにかして中へ声を伝えようと

努力しているからでしょうか?

Mの口が妙にとんがってます。

タコみたいです。

タコのくせに叫んでます。

そんなMを見て吹き出しそうになりましたが、彼は一生懸命です。

ここで笑っちゃいけません。

でもおマヌケなその姿は心を和ませてくれます。


(M、ありがとう!お前のおかげだよ)


心の中でお礼を言ってから、また声を出します。

でも反応は無いし人影も見えません。


か〜すけ
「ダメだな・・・いないや」



「どうしましょ・・・」



玄関は開かない。フロントには人がいない。

こんな時間にフロントに来る宿泊客もいないだろうし・・・

時間だけが過ぎていきます。


ん?そうだ!


突然ひらめきました!


か〜すけ
「従業員の出入口ってのがあるんじゃないか!?」



「・・・・・」


か〜すけ
「だからさ、宴会が終わってから従業員が帰るだろ?
 その出入口がどこかにあるはずだよ!」


「あ、あぁ〜!そうですね!ありますよね」


か〜すけ
「だろ、だろ!」



そう話しながら喜んではみたものの・・・

どこにあるんでしょ、それ?

従業員用出入口だからホテルの

でも裏側に行く元気勇気もありません。

困った・・・本当に困った!

困りながらもσ(^_^;は玄関の右側で打開策を考えていました。

でも思い浮かぶハズもありません。

Mは落ち着き無くウロウロしています。

そしてMが玄関自動ドアの左側に行った時、聞き覚えのある音が

耳に入ってきました。


ウィィィィン


あれ?と思い、音がしたほうに目を向けると・・・

Mがホテル内を指差しながら口をパクパクさせてます。

こんな時に何やってんだ、このスットコドッコイ野郎!

ちょっとムカつきながらMに近づいてみたら・・・


ウィィィィン


ん?

んー!?

じ、じ、自動ドアだぁ〜!!

玄関入口の大きな自動ドアの両横にハメ殺しのガラスがあるなぁ

と、思ってはいました。

σ(^_^;がいた右側は確かにただのガラスです。

しかし!左側は小さな片開きの自動ドアだったんです!

そして動いてます!開いてます!ウィィィィンって言ってます!


か〜すけ
「何だよこれ、自動ドアじゃん!」



「そうですよ!こっち側は自動ドアだったんすよ!」



この自動ドアが従業員用の出入口なんでしょうか?

でももう、そんな事はどうでもいいです。

これで一気に問題解決です。

無事にホテル内へ戻れます。

あまりにも突然の事だったので、嬉しいというより不思議な感じです。


か〜すけ
「はぁ・・・んじゃ中へ行くぞ」



「はい・・・行きましょう」


あっけない幕切れと今までの疲れで力が抜けてしまいました。

二人で肩を寄せ合いながら、自動ドアをくぐります。


ウィィィィン


自動ドアが静かに開き、ホテル内の暖かい空気に触れます。

と、その時!

廊下のほうから人が歩いてきました。

ベストらしいのを着ているので、ホテルの従業員みたいです。

ヤ、ヤバイ!

σ(^_^;はとっさにMに話しかけました。


か〜すけ
「や、やっぱさぁ。外は寒いから戻ろうぜ」



「そ、そ、そうですね。戻ったほうがいいっすね



Mも話を合わせます。

目線を合わせないように早歩きでエレベーターへ向かいましたが

何やら背中に視線を感じます。

エレベーターを待っている時に話しかけられたらマズイと思い

Mの浴衣をグィっと引っ張り、方向転換をして階段に向かいます。

階段をゆっくり2・3歩上がり、見えなくなったら猛ダッシュ!

2階へ駆け上がりました。

そして2階から恐る恐る下を覗き込みましたが従業員はいません。


か〜すけ
「良かったなぁ・・・今、ヤバかったぞ」



「まさかホテルの人が来るとは思いませんでしたよ〜
 呼んでる時はいなかったくせに!」




最後の関門を突破した我々は、二次会会場の3階へ向かいます。

廊下に敷きつめられたジュータンの柔らかな感触を足の裏で感じて

ホテル内に戻って来れたことを実感しながら歩いていました。

そして3階に着き、二次会会場に近づくと見慣れた顔とすれ違います。

話はしませんでしたが顔を見ただけで嬉しさがこみ上げてきます。

会場内に入ると相変わらず酒と煙草の臭いが入り混じっていますが

先ほどとは違い、なぜか今はそれも心地良いです。

人はだいぶ減って半分近くになっていましたが、聞き覚えのある声で

楽しそうな会話が耳に入ると、思わず顔がほころびます。



σ(^_^)は誰が使ったか分からないグラスを2個手に取り、煙草を

くわえながら近くにあった気の抜けたビールを注ぎます。

泡たっぷりのビールが入ったグラスをMに1個渡し、自分のグラスと

Mのグラスを軽く「チン」と合わせます。

そして小さな声で・・・



かんぱ〜い!






< 後 記 >


え〜と・・・

実話コーナーとしては長作になってしまいました。

駄文にお付き合いいただきましてm(_ _)mでしたぁ〜




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