社員旅行(前編)






もう10年以上前の話ですが、日光方面へ社員旅行で行きました。

バスで千葉を出発してお決まりの観光コースの予定です。

今回は観光バス1台あたり3〜4店舗の従業員が乗り合って、合計

4台で秋の日光に向かいます

ただお決まりじゃないのが、お酒大好き宴会部隊の従業員。

会社の駐車場で観光バスに乗り、出発して5分もたたないうちに酒類

をみんなに回し始めます。

なんで朝の8時から、キンキンに冷えたビールを飲まなくちゃいけない

んだろ〜

でもみんなガンガン、グビグビ飲んでます。

いつもは眠たそうな顔で出社してる奴こそハイテンションです。

おい、おい…お前いつもはこの時間、やっと会社に来てボケっと

してる頃じゃないの?

そんな事を思いながらσ(^_^)はジュースを飲んでました。

今回は目的地が遠いので午前中はずっとバスの中。

宴会部隊は、ずっと酒を飲みながら大騒ぎしてます。

最初ジュースを飲んでいたσ(^_^)も気がついたらビールが手に!?

そして他の場所で出発したバスと合流し、4台で昼食場所に到着。

もうすでに出来上がっていて、昼食を食べずにバスの中で酔いつぶ

れてる奴もいます。

バスから駐車場に降りたら、他のバスからもみんな降りてきました。

でも、なんか様子が変。

男たちは背中をまるめて首をすくめ、ポケットに手を入れて眉間に

シワを寄せながらガニ股で歩いてます。

女たちは逆に背筋を伸ばし、胸を張った感じで内股歩きです。

何か危ない集団がやって来たような・・・

そこでσ(^_^)は、まともそうな奴に聞いてみました。

するとそいつは


バスの中で退屈しちゃってね。後半、映画を見たんだよ。

 映画は仁義なき戦いだったんだけどさ。


なるへそ!それで男性陣は、若い衆を引っ張る若頭

女性陣は親分を影で支える姉さんに変身しちゃったんだな。

お酒が入ってるから、みんなその気になっちゃって〜


昼食後、ちょこっと観光をしてからホテルへ早めにチェックイン。

お風呂に入り、浴衣に着替えてから夕食です。

宴会部隊待望の時がやって来ました。

食事をしてから各店対抗のイベントがあったりして盛り上がり、

一次会は無事終了しました。

そして会社が用意してくれた、同じ3階の二次会会場に移ります。

一応、二次会は自由参加ですが、部屋に戻ろうとする人に宴会部隊

が声をかけ、次々に連れてきます。

中には嫌がる人もいましたが、そんな時は3〜4人がかりで無理やり

拉致ってます。

機敏かつスムーズで無駄のない動き、無言の連携プレー。

まるで特殊部隊スワットのようです。

そんなこんなで、全員参加になった二次会ですが、始まってみたら

酒を飲んで、騒いで、一気をやったりして・・・ただの酔っ払い集団。

オマケに煙草の煙が充満して、何だか息苦しい。

トイレにも行きたくなったので、席を立ちました。

廊下の奥にあるトイレへ行って、出ようとしたら同じ店のM(男)

トイレにやって来ました。σ(^_^)は廊下でMを待ちます。

トイレから出てきたMに


か〜すけ
「ちょっとここで、酔いを冷まさない?あっちは空気も悪いしさ」



「そうっすね。そうしましょう」



そしてトイレの入口近辺の廊下で話をしていましたが、特殊部隊スワ

ット
隊員もトイレにやって来ます。ここは危険です。

そこで廊下のさらに奥、突き当たりの奥まった所に非難しました。

掃除用具のロッカーと非常口のドアがある、小さな部屋のような場所

です。ここで酔いを冷ましながら、ちょっと休憩することにしました。

数分後、σ(^_^)はなぜか非常口のドアが気になり、なんとなくドア

ノブを回してみたら「カチャ」と、簡単にドアが開きました。

すると、外から勢いよく風が舞いこんで来た!

涼しくて気持ちいいし、酔いがいっぺんに冷めそうです。

今まで不足していた酸素も身体中に届きそう。

ふと見てみると、ドアの先には広めの踊り場があります。


か〜すけ
「外に出て、風にあたってみるか?」



「そんな事をして大丈夫っすか?」


か〜すけ
「そんなの大丈夫だよ。気がちいせーなぁ、行くぞ!」



不安げなM、踊り場に出るσ(^_^)


か〜すけ
「うわぁ、周りは真っ暗だよ。みんなもう寝ちゃってるんかなぁ?」



非常口のドアを押さえながら、Mが顔だけ外に出して覗きこみます。



「本当に大丈夫ですかね?怒られません?」


か〜すけ
「怒られたら謝ればいいじゃん!そんな事より、風が気持ちいいぞう」



「んじゃ、俺も出ますよ」



押さえていたドアを離し、Mが踊り場に来ました。

ガチャガチャ、ガッチャン!非常口のドアが閉まります。

周りは真っ暗なので、灯りは踊り場に付いてる小さなオンボロ蛍光灯

だけです。



「本当だぁ。気持ちいいですね〜」


か〜すけ
「だろ?でもなんか、千葉より風が冷たくねーか?」



「ですね!でも酔ってるから丁度いいっすよ。あぁ〜涼しい」


か〜すけ
「それにしても見事に真っ暗だよ。田舎丸出しって感じ」



「わはは(笑)千葉も十分田舎ですよ。負けてませんって」



そんなたわいも無い会話をしていましたが、10分もたつと寒くなって

きました。もう酔いも冷めたみたいだし、酸素補給も充分。


か〜すけ
「じゃあ、そろそろ戻るか?」



「そうですね、帰りますか?まだ二次会やってますよね?」


か〜すけ
「まだやってんだろ。そんなに時間たってねーぞぉ」



「んじゃ、戻って飲みなおしましょう」


か〜すけ
「そうだな、飲みなおすか。でも、一気はやらねーからな。ははは」



と、笑いながらドアノブをカチャっと回し、ドアを開けて・・・

ん?開けて・・・あれ?開け・・・開け・・・開かない!

ドアが開かない!



「どうしたんすか?」


か〜すけ
「・・・・・・」



さっきはドアを押して開けたんだから、こっちからだと引けば開くはず

だよな。あれ?逆だったっけ?もう完全に頭がパニック状態です。

ドアを引いたり押したり、ドアノブも右に回したり左に回したり・・・

でも開かない!全然開かない!



「えっー!ドアが開かないんすか?」


か〜すけ
「・・・・・・」



まずいぞ、まずいぞ!マジで開かねーぞ、これ!ど、ど、どうすんだ?

踊り場に誘ったのはσ(^_^;だし、ヤバイ、ヤバすぎる!



「どうするんですか!中に入れないじゃないですか!


か〜すけ
「・・・・・・」



そんなこと言ったって、開かないものは開かないし・・・

無駄な抵抗で、ドアノブをカチャカチャ回すσ(^_^;



「本当に開かないんですか?開かなかったらヤバイですよ!」


か〜すけ
「さっきからゴチャゴチャうるせーな!んじゃ、お前がやってみろ!」



逆切れです。完全に逆切れです。Mは悪くありません。

悪いのは全部σ(^_^;です。



「わかりましたよ・・・」



今度はMがドアを開けようとします。でも人が代わったから開くもん

じゃありません。闇夜にドアノブを回す音だけが響いています。



さてさて・・・

暗闇の3階非常口踊り場に閉じ込められた

酔っ払い二人。どう脱出するのでしょうか?

続きは、社員旅行(中編)をご覧下さ〜い。



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